tadashi kumihara『hyoi』CD
コンピューター・テクノロジーのデジタルなグリッド空間を、自在に加速するギターの多彩な音群。そして、「奏する」という身体性の圧倒的な表現力とその存在感。
硬質な鋼のミニマリズムから異世界のミニアチュール(細密画)まで、まったく新しい語法で描かれたその音楽は、聴く者をギター表現の新次元へ誘う。
グンジョーガクレヨンのギタリストとして活動し、また坂本龍一の問題作『B-2Unit』などに参加するなど、そのグループの枠のみに収まらない強烈な印象を与えながらも、活動の絶対量の少なさから、「知られざる異才」として語られてきた組原正の初のギター・ソロ作品。誰にも知られる事のなく、独りコンピューターと対座し音を紡いできた、他に類を見ない音楽の全貌が今初めて明らかに。
「奏する」という身体性と多彩な音群
コンピューターを使用し音楽を制作するという方法は、スタジオと同じ音楽制作環境を容易に自宅で構築できるというこの時代の、開かれた新たな可能性でもある。しかしこのアルバムで特筆すべきは、エレクトロニカのそれとは異質の、「直接的、肉体的なディバイス」であるギターによる、「奏する」という身体性のその多彩な表現力と圧倒的な存在感だ。
そのアルゴリズムで構成されたデジタル空間を自在に切り刻む、組原正のギターによる硬質なエッジを持った多彩な音群の、「一回性」の緊張度とテクスチュアの深度は、電子音のそれを遥かに凌駕したものとなっており、しかもその音楽は、あらゆるスタイル(ロックからフリー・ジャズに至るまで)から自由で、いかなるカテゴリーやジャンルにも属さない独自なものでもある。
いかなるものとも似ていない音
組原正が、このようにいかなるものとも似ていない、ユニークな音楽を作り続けてきたとは、驚きだ。現在のような情報の海に溺れそうな世界で、きちっと自分の紡ぎたい音を作ることは、至難の技。まさに孤高のギタリストと呼ぶにふさわしい。
―坂本龍一
■Track list
- 1. kamon ken uno
- 2. sususi
- 3. trisu
- 4. gosikesi
- 5. ken eke
- 6. hohoki
- 7. kesumi
- 8. susiken
- 9. shalran
- 10. konpi
- 11. hashi
- 12. kamohopi
- 13. kalkoken
- 14. kento
- 15. zinzinfye
- 16. ponton
- 17. suupi
- 18. yonekki